[子育て]

51話〜60話   東北女子短期大学 教授 島内 智秋



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[その51]

●「大人の期待を読み取る子」(1)

 無条件に子どもがかわいいと思うのが理想でも、実際は赤ちゃんの時にはまだ言葉をしゃべらず、無邪気に見えてかわいいと思い、その時は早く大きくなって ほしいと願ったのに、大きくなって生意気なことを言うようになったとたん、小さい時にはよかったのにと思ってしまうことも…。
 また、時期によって、親子とはいえ相性が会わないな〜、と思ったりすることもあります。それでも気にくわないからといって、その子をないがしろにしてはいけないと思います。栄養、健康、衛生に気をつけてあげることはもちろん、考えてあげなければいけないことがあります。
 赤ちゃんより年上の子や、スモールステップで育つ兄弟がいるという子は、大人の期待を読み取って、何かあっても我慢してしまうことが多いのです。どこ かで気持ちを爆発させれば救われるのですが、「お兄ちゃんだからわかるでしょ」「お姉ちゃんだから我慢できるよね」という期待に縛られるあまり、本当の自 分の気持ちを封じ込めてしまうのです。



[その52]

●「大人の期待を読み取る子」(2)

 我慢を我慢とも感じなくなるまで放置すると、思春期を迎える頃、とてつもない虚しさにおそわれる危険性もあります。子どもが言うことを聞いてくれると都合がよいので、我慢していることに大人は気づきにくいものです。
 無心になれる時間を作って、子どもを我慢の殻から引き出してあげましょう。新聞紙を丸めて、ちゃんばらごっこをする、じゃんけんで負けたほうを、思い切 りくすぐる、そんな他愛のない遊びに誘って「すご〜くおかしい」「もっとやりたい」という感覚を取り戻すのです。無邪気になれる時間は、正直な自分の気持 ちと向かい合う時間になります。何を感じているのか、何が好きなのか。「ぼく、こんなことが好きだったんだ」という肯定的な感情をもたせる、自分の気持ち に気づかせるのです。
 「我慢させているかもしれない」と思ったら、さっそく実行してみてください。きっと、くったくのない、いい笑顔にあえますよ。



[その53]

●「打ち明けられたら、三つの言葉」

 先日、虐待ゼロをめざすフォーラムに出席してきました。その中で、大阪や海外での取り組み例も紹介されました。なによりも生々しかったのは、大画面 いっぱいに映し出される虐待の傷跡やあざ、火傷のあとでした。ある大阪の医師は、子どもの傷跡から、どうやってできた跡なのか読み取り、虐待だと思われる 場合は、通報するということをしていました。
 子どもは、親が一番だと思っているので、虐待を受けていてもなかなか親にやられたとは言いません。言ったとしても「自分が悪いから」と親をかばうような 話になることが多いのです。ですから、たとえほんの一言でも子どもがその悩みを告白している時は、かなり勇気を振り絞っていると思われます。
専門家が相談を受けたとき、必ず言う言葉があるそうです。「よく話してくれたね、苦しかったね」「あなたは悪くないんだよ」「今までたいへんだったね」の三つです。
 また「本当なの?」「あなたにも原因があるんじゃないの?」「挑発してるんじゃない?」などは言ってはいけないことです。それはせっかく打ち明けようと しているのに、そう言われたら「言わなければよかった」と、口を閉ざしてしまうのです。虐待に加え、告白した自分を否定され、二重に傷つくのです。そうな ると、次に悩みを打ち明けるまでにも更に時間がかかり、その子の心の傷が深まる恐れもでます。
 もしも、自分の子どもから、よその子どもから悩みを打ち明けられたら、何はさておき抱きしめて三つの言葉をかけてあげましょう。



[その54]

●「cap」

 子どもの安全を守るためのcapというプログラムがあり、下二人が通う小学校で行われた。子どもから聞いた話によると、怪しい人に出会った時の身の 守り方を教えてくれたようだ。この頃は「出会った人に挨拶をしましょう」ということは怪しい人にも声をかけてしまうかも知らないので、通用しなくなってし まうのだろうか。どうも安心して暮らせないし、子どもが育ちにくい環境になってきた。
 そのcapプログラムの中から学んだ点が何個かあるので紹介したい(小1と小2の子どもから聞いた話ですが…)。
怪しい人に出会って危ないときに「キャー!」と叫ぶと、遊んでいるときの声だと勘違いされて大人は気に留めないとか。そんな時には「ウォ〜!」という特別 な声を出すといいらしく、その声の出し方を練習してやって、上手にできたから合格したと言っていた。また、背後からこられたときは、つま先を思いっきり踏 みつけるといいらしい。これを実際に使うことがないように願うばかりだ。
 私の住む大鰐町は、近所の人は顔見知りで、この辺の人でない人はすぐにわかる。また、近所の子どもを自分の子どものように叱ってくれる人もたくさんいる という、子どもにとっても子育て中の親にとっても過ごしやすい恵まれた環境にある。学校でも子どもの身を守るために、沢山のことを考えてくれているが、親 や周りの大人もできることから始めたい。
 通学路の環境では、落書きの場所があるということは、大人が管理していない場所であるというサインになってしまい、不審者には格好の場所になってしまうのだとか。通学路に落書きがある場合は、子どもの安全のために地域の大人で消すようにしたいものだ。
 これからは子どものためにも、近所の大人たち同士で心がけてかかわりを持つようにしていき、子どもが安心して過ごせる環境作りをしていきたいものだ。



[その55]

●「もう眠くてなんもやりたぐね〜じゃ!」

中2の息子が部活を終えて、これから塾へ向かう準備を始めようとしているときのこと。自分でやると決めた塾、部 活が終わって向かい、九時半までの塾で、大鰐に向かう10時の電車で帰ってくるというスケジュール。週に2回だが、くたくたになるまで部活をした後に は、きついものがあるようだ。その時に長男が、普段から思っている不満や悩みを吐き出した。
「なかなか頑張っていても、テストの点数に結果が出てこないこと」「部活もちゃんとやりたいのに、だらけている人がいて部長として悩んでいること」「部長 なんかひきうけなければよかったと思っていること」「バドミントンで優勝したいのに思うように強い所のような練習ができないこと」「自分は何をやって も一番になれないし、中途半端でだめなんだから、自分に期待しないで、自分にかけるお金を下の二人のために使った方が無駄にならないと思っていること」な ど…。
 いろいろな気持ちになっていて、いっぱいいっぱいでいたんだな〜と、聞きながら私も胸いっぱいになった。よく聞いて話をしたあと、気持ちを切り替えて長 男は塾に向かった。なかなか結果がでない状況を親としても、歯がゆく思いながらも、悩んでいるばかりの日々を送っていた。
 そんなある日、塾の支払いに行ったときのこと。支払いの横にあるテーブルで、黙々と勉強している女性がいた。「主婦のようだけど、大学受験するのか な〜?」と思っていたら、偶然出会ったのは幼稚園の先生時代に受け持った子どものお母さん!そこの塾の講師をずっとしているとか!ひとしきり思い出話や近 況を報告しあったあと、息子の状態を相談したところ、アドバイスをしてくれた。
 「結果が出なくても、こつこつやった子どもは必ず結果につながる時がくるよ。勉強は頭の中にやったぶん、点になって残って蓄積されていくの。今はその点 をたくさん集めている状態。でもあるときが来ると点が沢山集まって、線になってつながる時がくるの。そうなった時にグンと伸びるから大丈夫だよ。今の結 果だけで自分を諦めないで、こつこつやっていくように励ましていこう!」と、更に「柴田幼稚園に入れて、広いところでのびのび遊ばせてもらって、そのこと がいろんな場面での集中力になっているように思うの。すごく遊びを大事にしてもらったことで、うちの息子も良かったと思う」と感謝の気持ちを話してくれ た。
 なんでも、すぐに結果を出さないとダメだと思ってしまいがちの今の世の中。そのために小さいうちからいろんなことを詰め込まれる。遊びによって身につ いていることは、一見分かりにくいし大人からみると「ただ遊んでばかりいる」とも見えがち。遊びが育んだものは大きくなってから、心の土台としてその力を 十分に発揮する。出会ったお母さんの息子さんは東北大学の現在1年生。泥んこ遊びが大好きで、毎日毎日着替えや洗濯を沢山したことや、その時の眩しい泥だ らけの笑顔が目に浮かびとても嬉しくなった。
 嬉しい偶然の出会いで、寒い毎日の中、ほっこりと心が温まったいい日になった。



[その56]

●「食育は『おいしいね』から」

 食の出発点は食べることからです。「おいしいね」と感じたことを話し合うなど、食べる体験を共有することです。
 ごはんはよくかんでいるうちに甘い味がでてきます。ごはんはかむと甘くなることをお母さんが知っていて「あれ?ごはんをよくかんで食べると、甘いね〜なんだかお菓子の味に似ているね」などと教えると、子どもには味の微妙な変化にも気づき、味わう力が育っていきます。
 「今日のトマトはおじいちゃんの畑からとったものだよ。お日さまをいっぱい浴びて赤くなるんだよ。たくさんのお日さまを浴びて、真っ赤になってからとったトマトは、においも味も甘いね」といえば、トマトのにおいをかいでみたり、その甘さを味わったりできるでしょう。
 こうした味わう力の形成は、生まれてすぐのお乳を味わうことから始まっていますので、家庭での味わう場づくりが重要であることはいうまでもありません。
 一緒に味わって「おいしいね」のキャッチボールをしていく「味わう場づくり」が食育の原点ともいえます。「食べる」ことの大切さを感じ、食に関する知識を楽しく広げられるといいですね。



[その57]

●「あせらない、あせらない」

 昔の親はしつけをするときに、けっして急ぎませんでした。おむつがとれないなんて子は、世の中にいないんだというくらい気持ちは、だれでももっていました。
 お箸でうまくご飯を食べられなくたって、だれだってそんなことはできるようになるのだから、競争しない、あせらない、いそがない、こういう育児であったのです。これが大事なことなのだと思うのです。
 当時の親に「いつからできるようになるか、楽しみに待っててあげるからね」なんていう表現や感情はなかったかもしれませんが、結果としてそれとおなじような雰囲気の育児だったのです。
 育児をするうえで、もっとも大切なことは、子どもに生きていくための自信をもたせてあげることです。それには子どもにとって、最大のサポーターであり理解者が親なのだということが、子どもにつうじればそれでいいのです。
 こちらが焦っていると、子どもは大きくなるにつれて、もっと焦ります。そうなると、何事もちょっとやってみて、どうもだめそうだと思うと移り気をおこして、すぐぱっと変わろうとするようになりがちです。
 なにをやても自信をもてなくて、成果があがってくるまで、自分で自分を待てない子になりがちです。ですから成長や発達してくるのを、あるいはいろんなこ とが身についてくるのを、こちらがゆっくり待ってあげる姿勢をふだんからもっていると、それが子どもにも身につきます(親も忍耐強くなります)。
 ですから、待ってあげる姿勢は、子どもを十分信頼しているという気持ちを伝えることにもなります。このことは子どもへの愛を、子どもにもっとわかりやすく伝えることになるのです。



[その58]

●「早い時期に子どもに安心感を」

 人はどこかで全面的に受容される時期があればあるほど、安心して自立していけるように思います。全面的に受容されるということは、ありのままを承認され るということで、このままでいいのだという安心感、それが自信となるのです。人生のできるだけ早い時期に、この安心感をあたえられることが大事だと思いま す。その親を通して親以外の人も信頼し、やがて先生や友達を通してそれ以外の人も信頼していくようになるのです。この経験があるから、安心して生きていけ るし行動していけるのです。
 人は誰もが安心して生きていたいから、ありのままを認めてくれる人を一生懸命見つけようとします。早い時期に受容されていなくても、遅れてでもやってあ げなければならない大切なことです。早い時期に十分な受容や承認を得られている子どもだと、相手を受容しやすい感情が育っているから、相手からも承認を得 やすいし、友達もできやすい。ところがそうはいかない孤立しがちな状態が続いていくと、例えば思春期になっても仲間や友人に恵まれないでいることが多いよ うです。
 でも、なんとか相手に認めてもらおうとする若者は、とても早い時期から熱心な恋愛を繰り返すという傾向があるように見受けられます。一般に親や家族から 十分に受容されてきた若者は、中学生や高校生ぐらいの早い時期に、すごい恋愛に陥ることが少ないです。受容されてこなかった若者は、甘えたり受容されたい 気持ちが強いので、歳がうんと離れた人を求めたりします。
 親は子どもが大きくなってからでも、子どもを受容してあげればいいと思うのです。中学生になろうともその意味は大きいのです。子どもは、必要な分だけ受け入れてあげるべきだと思います。



[その59]

●「親のしらんぷり」

 フィギュアスケートの熱が高まっています。家の子もその影響を受けてか、スケートしたいとせがまれて、スケート場にいってきました。
 スケート場はにぎわっていて、親子連れからカップルなど、楽しそうにすべっています。その中でも日頃からスケートを習いにきていると思われる子や親もいました。
 初めての私たちでしたが、子ども達も喜んでいたので私も暖をとろうと、採暖室に入り、空いている席に座っていました。
 少しすると、常連らしい小学生が「勝手にすわってるし!」と私のほうを見て言うのです。この子が座っていたところなのだろうと察し、席を立ち横に寄った ら当たり前のような顔をして「むかつく!マンガもページおれてるし!」と言っていました。マンガには手も触れていませんでしたが、明らかに私に向かっ て言い放つのです。
 とてもいやな気持ちになりましたが、その子の親は気づかなかったのか知らん顔をしています。
 スケート場の席は、その子が年間でリザーブしている席でもあるはずもなく、明らかに公共のものです。みんなで気持ちよく使えるように、一人ひとりが少しずつ譲ったり我慢して使うものだと思うのです。これが社会のマナーであり、当たり前のルールであると思うのです。
 まだまだ未熟な小学生時代は、その時々に相手の立場になって考えるように、投げかけながら気づかせていかないといけないと思います。これを繰り返して、 大人がいなくても自分で判断できるようになるまで、いろいろな経験をさせて気づかせていきたいものです。そんなことを考えさせられた日曜日になりました。



[その60]

●「子どもは子どもの中で育つ」

 柴田幼稚園でしている週に2回1.2歳児の親子教室。3か月の前期と後期クラスでたくさんの親子と出会い子どものかわいさに、しびれっぱなしの嬉しい時間を過ごした半年。
 短期間の中で、初めは入室を嫌がって泣き叫んでいた子も後半は挨拶をして入室し、先生やお友達を遊びに誘ったりするようにもなり、物の貸し借りもできる子も増えて子どもの成長の早さに驚いた。
 そして、子どもは子どもの中で育つものなのだと改めて実感し、そうした環境を与えることが親にとっても重要な役割であるようにも思う。
 ひよこクラブには祖母の方と子どもペアも参加していたため、教室の中に3世代がいて家族のようなほんわかした雰囲気があった。
 親子教室の当初は、子育てに悩んで気持ちが苦しくなっているお母さんもいて、ほんとうに日頃のがんばりや、苦しい気持ちが伝わってきて、そんなお母さんが一人でも多く気持ちが軽くなり、悩みも解消できたらと思い過ごしてきた。
 初めは保育士に悩みを相談していたが、母親・祖母同士の輪が広がってからはその中で相談にのったりすることも見られ、母親同士祖母同士が集える場を提供していくことも子育て支援の大きな役割になることを実感した。
 とくに、前期後期と続けて来ている母親や祖母は、子どもが安定していることもあって気持ちに余裕があり、他の母親にも話しかけてアドバイスしたり、いい表情で子どもの遊びを見守ったりしていた。
 初めて参加した母親から「前から来ているお母さんやおばあちゃん方は、子どもとべったりしていなくて、見守ったり、待ったりしていて、子どもがのびのび 遊ぶためにはそれが大切なんだな〜とすごく勉強になった」という感想もよせられ、親が親を支えることが自然発生できたことも今回の収穫であった。
 なによりも嬉しかったのは、子どもの成長をみんなで喜びあえて、そのことで母親の気持ちも軽くなっていい表情に変わり、子どもに対しても優しく穏やかになっていたことだ。
 参加した母親の中に「家にいれば家事の片手間に遊ぶような感じでしたが、親子教室では子どもとしっかり向き合えて遊べたのでよかった。子どももとても楽しみにしていた」という感想もあった。
 子どもたちのたっぷり遊んでもらったあとの満足した表情に、やりがいや幸せな気持ちをたくさんもらった。
 家でこもって、もんもんと悩んでいるお母さん方! 春ですよ〜! 子どもと一緒に子育ての同じ悩みをもつ、いろいろなお母さんと出会いましょう! 気持ちを軽く明るくして子育てを楽しみましょう! また、ひよこクラブスタートの時にはよろしくお願いします!!


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