[青森県内観光]
「 写真エッセイ─あ お も り 心 象 百 景 」
写真・文 山内 正行(編集者/青森市在住)
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あおもり心象百景 その3


岩木山─Ⅲ 実りの山

 津軽平野の南に聳える岩木山は、冬の北西季節風を和らげ、平野南部に穏やかな気象をもたらしてきた。
そこには豊かな農業地帯が形成され、全国有数の反収を誇る稲作と、生産量日本一のリンゴ栽培が、その象徴と言える。
 近年、岩木山の名物として人気を集めているのが、「嶽(だけ)きみ」である。
「嶽」とは、岩木山麓の嶽地区のこと、「きみ」は津軽弁でトウモロコシのことである。
 この嶽地区の標高は、400~500メートルで、嶽きみの旬は8月下旬から9月中旬。
の頃の産地は、日中と夜間の寒暖差が10℃以上もあり、これがその高い糖度を生み出す要因だという。
 この夏、東京に住む友人に嶽きみを贈ったら、「このとうもろこしは、日本一おいしい」と、奥様がFacebookに載せてくれた。
 それにしても、今はリンゴの季節である。
 生産量日本一を誇る弘前市にあって、標高250メートル以下の岩木山麓もまた、広大なリンゴの生産地帯だ。
 その様子は、旧岩木町から弘前市石川地区まで続く約20㎞の通称“アップルロード”で、目の当たりにできる。
枝いっぱいに実をつけるリンゴ樹の森─まさに豊穣という言葉がふさわしい。
 戦後、大流行した曲に「リンゴの唄」があった。
これを津軽では、かつてこうも歌っていた。
 ♪赤いリンゴっこさ ほぺたこくっつげで 黙って見ていだ 青い空こ リンゴっこはなんにもしゃべらねけれど リンゴっこの気持ちこはよぐわがる リンゴっこめごいじゃ めごいじゃリンゴっこ
 あれは、小学生の時だったと思う。遠足のバスの車中で、バスガイドが披露してくれた。
元歌の1フレーズめは「赤いリンゴに唇つけて」、それを「ほぺたこくっつげで」(「ほぺたこ」とは津軽弁で頬のこと)としたところがミソである。
 これも昔の事と言えばそれまでなのだが、筆者なんかは、その田舎くさいユーモアに郷愁を誘われてしまう。

 
嶽きみ畑と岩木山(8月下旬)



枝いっぱいに実をつけるリンゴ樹の森から岩木山を仰ぎ見る(10月初旬)


稲刈りを終えた田んぼの風景(9月下旬)


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