[青森県内観光]
「 写真エッセイ─あ お も り 心 象 百 景 」
写真・文 山内 正行(編集者/青森市在住)
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あおもり心象百景 その5


岩木山─Ⅴ 

 望見(ぼうけん)─という言葉がある。読んで字の如く、遠くから望み見ることを言うのだが、青森市で暮らす筆者にとって、この望見の最高景物が、岩木山なのである。
 筆者が好むその望見スポットをいくつか挙げてみたい。
 第一には、同市東部の野内川(のないがわ)河口である。
西南方向に青森港を眺めることができ、ビルがひしめく街区の向こうに、岩木山が聳え立つ。
ここからは、殊に空気が澄んだ冬晴れの景観が素晴らしい。
 第二に、同市浪岡樽沢(たるさわ)地区の田園風景。
田んぼに水が張られた頃には、畦道に咲く菜の花の黄色が鮮やかで、その先に岩木山が鎮座する。
いかにも農業地帯の春にふさわしい牧歌的な光景である。
 第三に、浅虫(あさむし)森林公園の陸奥湾展望所からの眺めである。
沖合に浮かぶ湯の島を右手にして、海原の彼方に小ぶりな岩木山を望むことができる。新緑の頃がおすすめである。
 第四に、ベイエリアの中央埠頭からの望見。
青森ベイブリッジ、八甲田丸などの海辺を象徴する人工物とは対照的に、自然が創造した円錐形の岩木山が背景を飾る。
茜色した夕焼けの風景がよく、そのシルエットは影絵を見るようでもある。
 ここまで書いてきて、「青森市には八甲田(はっこうだ)があるじゃないか」と、賢明な読者からお叱りを受けそうだ。
 もちろん、その通りで、市民にとって身近な八甲田へは、市街地から車で30分も走れば、国立公園の山域に入ることができる。
八甲田には、独立峰の岩木山にはない、連峰ならではの魅力が満載なのも確か。
 とは言え、八甲田の岩木山展望所や城ヶ倉(じょうがくら)大橋、八甲田ロープウエーから望む岩木山の山容もまた、なかなかよろしいのである。

 
青森市の野内川河口から(12月下旬)



青森市浪岡樽沢から(5月中旬)


浅虫森林公園の陸奥湾展望所から(5月初旬)


青森市のベイエリアの中央埠頭から(9月中旬)


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