[青森県内観光]

◆「八甲田・十和田フィールドガイド」  久末正明


その1(2003/8/15)

●「花暦」その1

 八甲田・奥入瀬・十和田湖が一年で最もにぎわう夏の季節。
全国から多くの人たちが訪れ、登山、ハイキング、渓流釣り、ドライブなど、思い思いに北国の短い夏を満喫している。
 そうした中、最近とくに目をひくのが、花の姿に歓声を上げる女性たちの姿だ。
春から秋にかけて同じ場所に何度も足を運んでは、季節ごとに変る花の顔触れを楽しんでいるらしい。
 ところで、今年の夏は雨や曇りの日が極端に多く、日照不足と低温が影響してか、そうした花のようすにも異変が起きている。
 夏に咲く花の開花が遅れ、秋に咲く花の開花がいつもより早まっているのだ。
そのため、場所によっては夏の花と秋の花を一緒に見ることができる。
不順な天候がもたらした異常事態なのだが、「花好き」の目にはむしろうれしい現象として映るのかも……。




その2(2003/9/15)

●「紅葉」(1)

 秋の話題はなんといっても「紅葉」。9月の末には八甲田の峰々が色づきだす。
休日ともなると、八甲田ロープウェイの周辺や、毛無岱、睡蓮沼など名所はどこも人と車でいっぱいだ。
 残念なのは今年も城ヶ倉渓谷の紅葉が味わえないこと。
事故のあと遊歩道が閉鎖されたまま、再開の見通しはいまだについていない。
八甲田を代表する紅葉の名所であるだけに寂しい。
紅葉の名所と言えば、意外に知られていないのが酸ヶ湯温泉周辺。
 紅葉期間も長く、例年10月の中旬くらいまでは色鮮やかな紅葉が楽しめる。
ところで、今年は冷夏の影響で木々の色づきが早く、長雨と台風のため傷んだ木の葉もだいぶ目につく。
紅葉の質は果たしてどうか。なにより、これからの天候の回復に期待したい。




その3(2003/10/15)

●「紅葉」(2)

 例年よりも1間ほど早かった八甲田の紅葉。10月に入ると、今度は十和田湖と奥入瀬の紅葉が急に進み始めた。
15日現在、すでに見頃を迎え、このままいくと、20日以降は「名残の紅葉」に主役を譲りかねない勢いだ。
 夏場の天候不順と、9月の台風が災いして枯れ葉が多く見られるものの、遠目にはどうしてなかなか美しい。
 山の中に入るよりは、車道沿いや展望台などから眺めた方が楽しめる。
また、キノコやヤマブドウといった山の幸と抱き合わせで野山を訪れる人も多いが、今年はそうした「山の物」が極端に不足している。
 野生の生き物たちにとってはまさに死活問題といったところ。
少ない山の恵みに目くじらをたてて群がるのはやめ、紅葉を楽しむだけの秋、とされてはいかがだろうか。




その4(2003/11/15)

●「撮影のすすめ」

 冬枯れとともに、カメラマンの姿が急に見られなくなった。おそらく紅葉の華やかさにまだ酔いしれているのだろう。
 しかし、初冬の八甲田も被写体としての価値は相当なもの。
青空に浮かぶ白い峰と、霧氷に覆われた樹木のたたずまいは、この季節ならではの美しい光景だ。
 しっかりした三脚と望遠レンズがあれば、遠方からでも、まるでその中に立っているかのような、臨場感あふれる写真を撮ることができる。
ずるいと言われそうだが、冬山に入れない人にとっては格好の手段であると思われる。
おすすめのポイントは、萱野高原や酸ヶ湯温泉、そして田代平など。
マイカー利用の方は万全な雪道対策、とくに他の通行車両に迷惑をかけない駐停車を心がけたい。またバス利用の方は、東八甲田ルートを通るバス路線が再開されたのでぜひご活用を。




その5(2003/12/15)

●「冬の自然観察@」

 いつになく遅い雪の訪れだったが、さすがに12月。一転して本格的な冬となった。
雪の野山は動物たちの足跡ですでにいっぱいだ。
夜行性のものが多く、姿はほとんど見かけないものの、「こんなところにも」と思えるほど、足跡はそこかしこに記されている。
 生き物たちが夜の間に果たしてどんなドラマを繰り広げていたのか、それを想像してみただけでも楽しい。
 興味深いのはそのパターン。動物により、雪に残る足跡の配列が決まっていて、慣れれば種類だって特定できる。
「これはキツネ、むこうはタヌキ、となりはウサギにテン」などといったぐあいだ。
ところで、その足跡が一体どういう足の動きで形作られるのかご存知だろうか。
それを知るためには犬との散歩が一番である。愛犬が残す雪の上の足跡が、すべてのヒントを与えてくれる。




その6(2004/1/15)

「冬の神秘@」

 国立公園「十和田」の冬の風物といえば八甲田の樹氷、と一般に思われがちだが、奥入瀬や十和田湖で見られる雪と氷の現象も捨てたものではない。
 とりわけ十和田湖の「しぶき氷」は、その厳しくも美しい姿がカメラマンたちを魅了してやまない。
強い寒気を伴った冬の季節風が吹き荒れると、風下にあたる湖の東側には海のような波が押し寄せ、それが岸にぶつかってしぶきとなる。
しぶきは湖岸の岩や樹木の枝に飛び散り、寒さのために凍りつきながらさまざまな氷の造形を生みだすのである。
岩を覆う氷のかたまり。木々の枝にぶら下がった大小さまざまな氷柱(つらら)など。例年、1月から2月にかけては、「子の口」を中心にそうした光景が随所で観察される。
ただし、岸辺を覆う氷に足を滑らせ、湖に転落する人もいるので、あまり近寄らないようくれぐれも注意を。




その7(2004/2/15)

「冬の自然観察A」

 冬はとかく家に閉じこもりがちだが、健康に支障がないかぎりは、思い切って雪の野山に飛び出してみたいものだ。
 他の季節とは違って人気(ひとけ)はほとんどなく、まるで「貸し切り」といった気分。
近頃は、雪の上を歩くための便利な道具がいろいろあって、道案内さえしっかりしていれば、その人の体力に合わせていろんな山歩きを楽しむことができる。
それを教えてくれるのが国立公園内で実施されている自然観察会。
 雪山を歩くための道具が借りられ、ガイドが道案内と自然解説をしてくれる。
一般は無理だと思われていた冬の山歩きも、夏山程度の体力で、その醍醐味を存分に味わうことができる。
厳しい冬ならではの風物と、快い汗。自然観察にシーズンオフはない。
 あなたもきっと病みつきになってしまうはずだ。
国立公園「八甲田・奥入瀬・十和田湖」で行われている自然観察会の問合わせ先/自然公園財団十和田支部 電話0176-75-2368




その8(2004/3/15)

「花暦A」

 街の方からはすでに花の便りが届けられている。
庭に咲いたフクジュソウや、マルバマンサクの話題だ。
奥入瀬と十和田湖の周辺でも、あとわずかで、その花の姿が見られるようになる。
まだ寒く、殺風景な早春の野山で、彼らと出会う喜びは大きい。
奥入瀬の周辺ではフクジュソウを「まんさく」、マルバマンサクを「木まんさく」と呼んでいる。
さらに、キクザキイチリンソウのこともやはり「まんさく」と呼ぶことがある。
フクジュソウが見られない地区では、キクザキイチリンソウだけが唯一、それに代わるものだからだろう。
 いずれにせよ、春一番に咲くので「まず咲く」が「まんさく」になったとも言われるように、春を待つ人々の心がしのばれる。
そうした「まんさく」づくしの季節がいよいよ始まる。




その9(2004/4/15)


 十和田は今、木々が赤色や黄色などさまざまな色に芽吹く、いわゆる春紅葉(はるもみじ)の季節を迎えている。
カツラやハウチワカエデ、ヤマモミジの赤色と橙色(だいだいいろ)。イタヤカエデの花の黄色。そしてブナの黄緑色など。
 それは決して色鮮やかなものではないが、奥入瀬から十和田湖にかけての森は、まるで秋の紅葉を思わせる風情だ。
一方、八甲田はまだ厚い雪に覆われ、その雪を求めて訪れた登山者と、春スキーヤーたちで終日にぎわっている。
 冬と春が混在する不思議な世界。それこそがこの国立公園の魅力だといえよう。
これからの1ヶ月間、山のようすは劇的に変化し、そのスピードは秋に勝るとも劣らない。
日差しの強さ、風、川音、鳥たちの声。すべてが夏に向かってエネルギッシュに動き続ける。



その10(2004/5/15)

「エゾハルゼミ」

 春があまり暖か過ぎたせいか、今年はエゾハルゼミの発生が実に早い。
5月の半ば以降、八甲田・十和田は、その鳴き声でどこもいっぱいだ。
エゾハルゼミはヒグラシに似た小さなセミで、北海道から九州にかけて生息している。しかし、どちらかというと北の地域の、それもブナ林に多い。
十和田では例年、6月の上旬に羽化のピークを迎える。
ところで、いつも騒がしいくらい鳴くエゾハルゼミだが、その存在を知っている人は意外に少ない。
 それは山地の森でしか見られないことに加え、春に現れるという特異性が一番の理由だと思う。まさしく春蝉と呼ばれる所以ゆえん)である。
しばらくの間は、鳥のさえずりも聞こえないほど鳴き続けるものの、新緑が深緑へと変わる頃にはすっかり姿を消してしまう。


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