[青森県内観光]

「恵雲と辻風の珍探訪」

 
その3

■一番 護国山久渡寺A(ごこくさんくどじ/弘前市)<1日目>  

○長い階段は異界へのいざない

 そういえば石段の数を数えていたのだった。
石段は約80から急こう配となり、92段から段差が激しくなる。
木の根が石段を持ち上げていて安定感がない。
144段から一段ごとの奥行きが浅くなり、斜めにしか足をつけなくなってくる。
190段で踊り場に出て、約220段でようやく観音堂のある境内に到着した。
左手に白く巨大な観音様がたたずんでいる。下の案内板には「ミス観音」とあったが、八頭身でスタイルがよく、どことなく洋風な顔立ちでマリア像のような趣(おもむき)がある。
右手に朱塗りの観音堂があるが、残念ながら中は拝見できない。背後の白い奥の院には、「蟹(かに)ボタン」の紋をアレンジした津軽藩の紋が配してある。
住職の話では、久渡寺の本尊である聖観音菩薩(せいかんのんぼさつ)は秘仏で、この奥の院に納められているとのことだから、より一層神妙に手を合わせる。 
ここが到達点かなと思ったら、まだ右奥に細い道がある。
のぞいてみると、左側の斜面に200体近い板碑(いたひ)の観音様がこつ然と現れた。
この荘厳な光景は圧倒的な迫力があり、二の句が継げない。
一体一体をよく見ると函館など他県からの寄贈仏もあり、信仰心の強さが感じられる。
よく目を凝らすと、この仏像群の周辺に、ポツリポツリと異なる種類の観音様が点在している。
「西国壱番紀伊国那智山(さいごくいちばんきいのくになちさん)」と記されているので、おそらく標高630mの久渡寺山頂にたどり着くまでに三十三体あるものと想像される。
何でもこの先は、国見坂といって、藩祖為信が親友・盛岡金吾を暗殺した場所らしい。
 二人は曾祖父を同じくする一族で、もし国盗りに成功したら領土を半分分けしようと誓ったのだが、惜しくなった為信は、家来を使って信元を暗殺したという。
しかし盛岡家は絶えることなく、寺宝の「幽霊画」は、この盛岡金吾から五代後の森岡(盛岡改め)元徳(もとのり)が奉納し、その娘がモデルだとされている。
いよいよ本格的な登山道になりそうだし、悲しい歴史の現場はそっとしておきたいので、この場所を自称のゴールとして引き返すことにした。
戻ってくると、先ほどの管理人たちが下の茶屋で談笑している。「石段、大分きれいになったねぇ」「そうでしょ、あそこは自衛隊が訓練のためマラソンするので、メンテナンスが必要なんだよね」なんて会話が聞こえてきた。
肝試しだの幽霊画だのが「こわい」と言い訳し、長い石段の上り下りをためらっていた私だったが、激しい昇降運動をものともしない自衛隊のガッツに励まされた。
笑っている膝をさすりながら、「わい、こわいじゃ」(津軽弁で疲れたの意)などとダジャレをぼやいて、これから始まる修業の旅路を想像しながら、ようやくありつけた支那そばに舌鼓を打つのだった。




護国山久渡寺(真言宗智山派)
本尊 聖観世音菩薩
御詠歌:普陀落や恵みも深き観世音 罪もむくいもはらす宮だち
〒036-8244 弘前市坂元山元1

 






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