[青森県内観光]

「恵雲と辻風の珍探訪」

 

前へ           次へ
その18

十番 春光山円覚寺A(しゅんこうざんえんかくじ/深浦町)<2日目> 

○寛永時代の四浦の一つ、風待ち・潮待ち港は宝物の集積地

 ここからは後に寺宝館の中を見学した模様を書こう。
円覚寺を訪れた当初、すぐ次の札所に回ったのは、実はそんなに宝物に期待していなかったからである。
が、後で調べると、どうも珍品がありそうなので家族旅行を深浦に設定し、立ち寄ってみた。
入館料400円を払い、まずは案内の和尚さんの語り口が流暢なことに驚く。
明るいお経のように旋律がとめどなく流れる感じだ。
館内はひんやりしていて、いきなり大きな青銅の鏡のようなものや、壁一面の曼荼羅絵など見入るものばかり。
奥へ進むにつれかぶりつきになる。
さすが北前船の着いた港だけあって、蝦夷錦やギヤマン玉(ギヤマンはオランダ語のダイヤモンドから。ガラス製品のこと)、古伊万里、古九谷もあるではないか。
中でも珍しいのが「髷額」(まげがく)。
江戸時代は航海の無事を祈って船絵馬を奉納するらしいが、これはお侍さんのチョンマゲを切って船絵馬につけて奉納したもの。
難破を逃れた後にお礼に納めたものらしい。
さらに興味深かったのは、北前船の航海の様子を書いた船絵馬に登場する謎の人物。
舳先(へさき)にいて、航海の安全を守る祈祷師のような存在で、無事に航行できれば褒美をもらえるが、もし安全な航海ができなかったときは、生贄(いけにえ)として海に投げ落とされるいう。
シャーマンなのに生贄というのは、中国の「宦官」(かんがん/神に仕える奴隷)のようで、高位なのか身分が低いのか微妙な役回りがあったんだなと思った。
もう一つ、感動したのが、絵の上手だった先々代の義観が作った「毛髪刺繍三十三観音と毛髪刺繍八相釈尊涅槃図」。
見る前は人毛なんて気持ち悪いなと思ったのだが、人毛は劣化しにくいのかもと気がついた。細い人毛なので、ひと針ひと針の目が緻密なあまり、全体が生き生きとして今にも動き出しそうな感じがする。
ガラスの壁にかけてあるので、裏から刺繍作業の苦労の跡が見られるのも臨場感がある。
屋外の薬師堂内にある厨子は、室町初期の県内最古の建造物で、国の重要文化財。
白木作りで2mはあり、薬師堂いっぱいに収められている。繊細な細工に飛騨の職人技が見て取れる。
満足いっぱいでこの地をあとにしたが、1ヶ月ほど経ってから、深浦町で出した懸賞が当たり、「つるつるわかめ」やら「雪人参ジャム」やら地場産品の詰め合わせが届いた。
私はくじ運が悪いので、こんなラッキーなことは、あった試しがない。
これはもう絶対、円覚寺のご利益に違いない。また行こう。
                                     (辻風)

春光山円覚寺(真言宗醍醐派)
本尊 十一面観世音菩薩
御詠歌:ただ頼め行末祈る深浦の 明日の命のほどは白浪
〒038-2324西津軽郡深浦町大字深浦字浜町275
TEL 0173-74-2029














前へ           次へ
 歩っきゃ!“津軽三十三観音”TOP

トップページへ