[青森県内観光]

「恵雲と辻風の珍探訪」

 

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その20

九番 見入山観音堂A(みいりさんかんのんどう/深浦町)<2日目>  

○“胎内くぐり”で擬死再生人生も参道も山あり谷あり

息も絶え絶え上っていくと、中腹で、台座に「ケッパレ」(津軽弁で頑張れの意)と書かれた小さな白い観音が微笑んでいる。
この微笑みに励まされて50mもきただろうか、今度は「あと少し」と書かれた観音様が。
そう来たか、次は何だ? 麓にあった全容図からすると「あぶらながし」だ。
油汗が出るくらいきつい坂なんだろうな・・・・・・。
息切れのボルテージが喉元までにじりよってきて、溺れるのに近い。
朦朧(もうろう)としている中で視界に入ったのが「すぐそこ」観音。
なるほど。
ここからは急な下り坂となり、分かれ道で上りと下りに。
上って行くと、まるで大男がえぐったような洞窟が二間ほどあり、「胎内くぐり」と書かれている。
お堂には比較的新しい板碑の不動明王が安置され、近くにたくさんの積み石が置かれている。
積み石は、単純に登山の道標だと言う人と、先祖があの世で積む石のお手伝いだという人がいる。
どんな思いが込められているのだろう。
「胎内くぐり」をくぐると擬似的に一度死んで生まれ変わり、肉体と魂が浄化されるという。
確かに洞窟の中にいると、なんだか母親のお腹の中にいるような錯覚が起こる。
よし、ここをくぐって起死回生を図ろう。
分岐点まで戻って下りの道を進むと、別名“窟観音”(いわやかんのん)と称される本堂が現れた。
京都の清水の舞台のような“舞台づくり”のお堂で、巨岩の中に埋め込まれたように造られ、下から覗くとのしかかってくるような迫力がある。
右脇に伸びる階段を登ると、本堂脇に山神、稲荷、弁天、愛染、毘沙門、薬師の小堂が並んでいた。
本堂の天井はカラフルな碁盤目でマス目に梵字が描かれ、千羽鶴が吊るされている。
祭壇の正面は3面に分かれているが、どうも真ん中が本尊の如意輪観音らしい。
お姿を覗くと、あら、涼しげな顔で片膝立てて座っていらっしゃる。
右手で頬杖をつき、左手に持った蓮華がたゆたう感じで、なんとも優雅な仏様だ。
燭台の脇に奉納された写経の山があり、一番上にはなんと、私の極近所の方の住所が。
日付はつい2週間前で、津軽三十三観音巡りがいかにメジャーなイベントか再認識するとともに、この納経に「おいでおいで」と呼ばれたのかもと、見えない糸を感じた。
 帰り道は下りで、足を滑らせるとやばい。
それこそ手すりに“たづまって”(津軽弁でしっかりつかまるの意)、腰を落として階段を降りる。
こわごわだが上から見下ろす景色には爽快感がある。
沢の音が大きくなったと思ったら、林間に渓流釣りをしている人の姿が見えた。
予想外の荒修行からやっとこさ下界に降りて来た。
汗びっしょり、膝は「カカカ」と笑っている。
やれやれというところに、お腹のところが黄色い、スズメサイズの「キセキレイ」がまるで神様のお使いのように現れ、ピョンピョントテテテ…と青森ヘの帰り道を案内してくれた。
                                          (辻風)


見入山観音堂(真言宗)
本尊 如意輪観世音菩薩
御詠歌:深山路や檜原松原分け行けば 山も誓いも深き谷川
〒038-2413 西津軽郡深浦町追良瀬初瀬山草分28













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