[青森県内観光]

「恵雲と辻風の珍探訪」

 

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その33

■十五番 薄市観音堂A(うすいちかんのんどう/中泊町・旧中里町)<6日目>

○朱印所の商店には、昭和のなつかしい光景が

 祭壇の正面に「勢至観世音菩薩」と看板が掲げられている。
はて、こんな名前の菩薩があっただろか。勢至菩薩も観世音菩薩もどちらも菩薩だ。
そうか、「勢至・観世音菩薩」の二体が奉納されているということなのか。
浄土教では、阿弥陀如来の脇侍である、この二つの菩薩を一緒に祀ることもあるそうだが、札所の本尊は千手観音のはずだ。
祭壇の傍へ近づいて、鏡の背後にあるらしき仏像の姿をのぞいてみた。
おっ、高木ブーさん似の観音様だ。印相(手の形)からしても、背中に千手がないことからしても、どうも千手観音ではなさそうだ。
本尊は長い年月の間に消失したか、奥の院にしっかりしまってあるかのいずれかだろう。
 お参りの帰り、フェンスに囲まれ、ベンチが置かれた展望台のようなところがあり、眼下には集落と水田が広がっていた。
その向こうに光っているのが十三湖の湖面かもしれない。そういえば御詠歌に「萬々と眺めもあかぬ十三の海 千年をここに松風の音」とあるではないか、きっとそうだ。
 御朱印所はここから少し離れた、日用雑貨や食品を扱う「小寺商店」。
「こんにちは〜」と入っていくと、店のおばさんがソーダアイスを食べていた。
「御朱印をいただきにきました」と言うと、モグモグしながら「あっち」と指差したので、指示通り奥へ行くと、グリコのアイスボックスの上に御朱印セットが置いてあった。
この店のおばさんの「店番をしながら商品であるアイスを食べる」という行為は、私の幼少の頃を連想させた。
私の叔父が営んでいた商店の店番を、小学校にあがったばかりの私が手伝った時のこと。
「店のお菓子は何でも食べていいよ」と言われていたが、我ながら「ケジメがない」と拒否し、それより店に立っていることを誰かに自慢したくて、同級生を大勢呼び寄せ、自分のお年玉でアイスをおごった記憶がある。
後で母親に大分しぼられたが、バイト代として叔父さんに大きめの自転車を買ってもらって、母親と兼用で乗れるからと丸くおさめたような気がする。
蛇足になったが、「店のアイスを食べながら店番をするおばさん」は、今やコンビニが乱立する街中では見かけなくなった珍百景。
のどかでおおらかな十三湖周辺地域の懐の深さを感じた。夏休みにはお孫さんあたりが、店番をしているなんてこともあるんだろうな。(辻風)

薄市観音堂
本尊 千手観世音菩薩
御詠歌:萬々と眺めもあかぬ十三の海 千年をこゝに松風の音
〒037-0302 北津軽郡中泊町大字薄市山1-1
TEL 0173−58−2518













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