[青森県内観光]

「恵雲と辻風の珍探訪」

 

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その35

■十六番 今泉観音堂@(いまいずみかんのんどう/中泊町・旧中里町)<6日目>

○いにしえの都・十三湊に観音様のご慈悲あふれて

全国的にも珍しい「階段国道」のある「国道339号線」を南下する。
これから向かう札所のある、旧中里町「今泉」・「薄市(うすいち)」・「尾別」地区は、かつて岩木川下流の湿地帯で、集落が「内潟」という潟に面しており、縄文時代の遺跡が数々出土する歴史ある土地だ。
これら3つの札所の観音様は、“神は仏の仮の姿”とする「本地垂迹説」の浸透で神体化され、「観音堂」が「飛竜宮」と改称された時代がある。
津軽三十三観音の札所は藩政時代初期に開設され、初めは弘前城下に多く、その後西北・南津軽郡に広がって、1700年代後半には菩薩の仮の姿「飛竜権現」を祀る「飛竜宮」、つまり「神社」に姿を変えたりと、明治の神仏分離令の影響もあって廃止や新設を繰り返し、札所の順番や場所も変化して現在に至っている。
しかし「堂」が「宮」となっても、本尊が取り上げられ、仏様が神様になっても人々にとっては「かんのんさま」に違いなく、この3つのお堂はその後、人々の厚い信仰心によって再び観音堂としてよみがえったのである。
車窓からのどかな田園風景が見える。今泉の集落は、縄文時代、気温が高くて海水面が上昇し、藤ノ森地区まで古い十三湖が広がっていたとされる。
当時十三湖付近を拠点にしていた豪族・安藤氏が、南北朝時代の大津波や室町時代の戦没者の供養のため地蔵堂を建てたが、それは今泉観音堂のもとあった場所「唐崎山」にあり、現在地蔵堂は川倉へ移り、跡地はパワースポット「賽の河原」となっている。
このあたりはもとから霊力の強い土地なのである。
散策の拠点、道の駅「トーサムグリーンパーク」には、シジミをはじめとする十三湖のお土産がいっぱい。
観光のボルテージがあがり、「やはり十三湖見物をしよう!」と、中之島ブリッジパークへ。
橋から臨む湖面は、残念ながら曇り空のためグレーで寒々しく、それと対極的に広場前に広がる、総天然色で彩られた数件の出店に目がいく。何やら店の前でスコップ三味線のパフォーマンスが始まり、アイス、スイーツ、軽食と華やかな“お出迎えムード”に心はウキウキ。
思わず「名物しじみ汁が200円のところ今なら100円!」をいただく。
どっさり貝が入った濃厚だしに舌鼓をうつ。「ハフハフ、モクモク」と堪能していたら、店のおじさんが話しかけてきた。どうやら、十三湊の安藤氏の歴史に詳しいらしい。
「青森の歴史はここから始まった」と熱弁をふるい、安藤氏の栄華を信じてやまない“郷土愛おじさん”の話は、どこかSFチックで、彼自身が宇宙人か安東氏の末裔(まつえい)のように感じられた。
もしかしたら33種類に姿を変える観音様の脇立(わきだち)あたりなのかもしれない。 

 (辻風)


今泉観音堂(神明宮)
本尊 千手観世音菩薩
御詠歌:昔よりありとも知らぬ今泉 千手の神のしるしなるらん
〒037-0301 北津軽郡中泊町大字今泉字唐崎81
TEL 0173−58−2036












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