[青森県内観光]

「恵雲と辻風の珍探訪」

 

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その43

二十五番 松倉観音堂@(まつくらかんのんどう/五所川原市)<8日目>

○霊峰・梵珠山の懐深い神秘の森に生命の息吹あふれ

 五所川原の梵珠山といえば、多くの青森県民が小学校の合宿などで一度は訪れたことがある“県民の森”。
その梵珠山の西側に位置するのがこの松倉観音堂だ。
地図によれば、国道101号線の下をくぐって4qほど行くと、観音堂の南登り口があるはず。
割と簡単に行けそうだと思っていたら、途中から道幅の狭い、あまり環境のよろしくない砂利道となる。
近くに採石場などもあるようで、向かい側から大型車が押し寄せたら、と一抹の不安がよぎる。
幸い、すれ違ったのは中型のトラックで、路肩に寄って道を譲ってくれた。
奥へ進むにつれて鬱蒼とした林道となり、道端には倒木も現れて、ますますこれは大変なところに来たかもしれないと思った。
駐車場についた。
新緑の中に赤い鳥居が見え隠れし、「松倉神社入口・津軽三十三観音入口」の看板がある。
ガイドブックにはお堂まで徒歩20分とあるので、本格的な登山を覚悟した。
目の前に広がる“樹海”と言っても大げさではない風景に、携帯電話だけは持とうとしたら、圏外表示が。
遭難しても見つからないな。
まずは三十三観音の一番の石仏が出迎えてくれた。
左手が山の斜面、右手が谷になっている。
沢の水のチョロチョロと小気味いい音が響く。
おや、あれはなんだ? 
対岸の木々の間に白くて丸いものが点々と見える。
直径15pほどの丸い泡の塊が、鈴なりに枝にぶら下がっているではないか。
木の実ではないな。「何かの生物の卵じゃない?」と恵雲さん。
気持ち悪いなぁ。
後で調べるとモリアオガエルの卵だと分かった。
「カララ、カララ」と聞こえたのはこのカエルの鳴き声だったんだ。
モリアオガエルは日本各地に生息するが、森林に人の手が入って減少傾向にあるとも言われていて、まずは貴重な出迎えを受けて嬉しかった。
森閑とした樹林にヒグラシのような「カナカナカナ」という鳴き声がこだまする。
今の季節にセミが? 
姿は発見できなかったが、これはエゾハルセミという春のセミらしい。
さすがは梵珠山、鎮守の森とは桁違いだ。
珍しい生物がたくさん生息している。
 参道は急こう配で、息切れがする。
初めは恵雲さんとおしゃべりしながら闊歩していたのに、次第にどんよりと、二人とも無口になる。
道端の観音様はきっと33体あるので、石仏の番号が何合目かの目安になるのだが、まだ中腹でゲンナリする。
どうにか30番までたどり着くと、整備された丸木の階段が途切れ、木の根の階段となる。
もうすぐだ。
 広場に出た。
一瞬、人がいるのかと驚いたが、着物を着た石仏や馬だった。
黄泉(よみ)の世界という設定なのか、着物のあわせが逆になっていて芸が細かい。
広場の真ん中に東屋風の大きな集会所のような建物があり、「松倉神社」の神社誌が掲げられている。
この神社誌によれば本尊は馬頭観音と記載されているが、文献では以前は十一面観音だったとされている。
あるガイドブックには「松倉観音堂は801年坂上田村麻呂によって創建され、1210年に金光上人が十一面観音を置いた。
その後明治の廃仏毀釈で本尊は上納されて神社となったが、後に観音堂が復活、馬頭観音を置いた」(要約)とある。
後で触れるが、松倉観音の御朱印所である元光寺には大きな十一面観音像が祀られており、最初に安置された観音様が十一面観音ということなので、ここでは十一面観音を本尊としたい。
この観音様はその名の通り、苦しんでいる人をすぐに見つけられるように、頭に十一の顔をもっており、人々を叱咤激励しているという。
延命や病気平癒の御利益がある。
先ほどの集会所に賽銭箱や燭台が置いてあったので、これが拝殿と思われる。
しかし奥へ行ってもだだっ広く、観音様が見当たらない。
例によって奥の院にあるパターンかと、さらに奥へ行くと、大木の根元に小さなお堂があった。
傍らで最後の道案内役と思われる観音様が小首をかしげている。あれだけ登って、ここが最終地点か。
ちょっと拍子抜けしたかな。
まずはお参りして帰ることにした。(辻風)


梵珠山 松倉観音堂(松倉神社)
本尊 十一面観音菩薩
御詠歌 あなたうと導き給え観世音 誓いをこゝに松倉の宮
〒037-0631五所川原市前田野目字野脇102
元光寺 0172−62−3382















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