[青森県内観光]

「恵雲と辻風の珍探訪」

 

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その44

二十五番 松倉観音堂A(まつくらかんのんどう/五所川原市)<8日目>

○雲を誘いて天空を舞う 登り竜さながらの五葉松

 梵珠山登山から無事に帰還して、原稿を書こうとガイドブックを見直した。
おや、掲載されているお堂の写真が見てきたものと異なる。
他にもあったのか! 
さらに奥に、本物のお堂があったらしい。
それに加えて、写真を整理していたら、なんと間違ってデータを消してしまった。
これは決定打だった。
もう一度あの長い参道を制覇せよという思し召しかもしれない、苦行を重ねた末に導かれる道があるのかも、と次の登山を決意した。
前回の行程で松倉全体のスケールを把握していたので、今度は最初から飛ばさずゆっくりいこう。
ガイドブックの徒歩20分は、颯爽(さっそう)と駆け上がった場合で、道草を食うと30分はかかる。
おっと、上の方から、まだ小さな赤ちゃんを片手で抱いた若いお父さんが降りてくる。
危ないでしょ。
連れの若者たちもショートパンツにサンダルの軽装だ。
大丈夫かな、転ばなければよいが。
途中、大量のみず(ウワバミソウ)を背負った山菜取りのおじさんたちと出会う。
「あんたたち、上まで行くの?」と聞かれ「はい、本当の上まで行きます」と答えた。
「あれ、若いのにちゃんとわがってらもんだ、ほう」という声が返ってくる。
やはり、上までは知る人ぞ知る道なのかもしれない。
 例の着物を着た石仏たちが集う広場にきた。
大きな拝殿の右脇の奥に巨岩があり、その上にお堂があるはずだ。
出た、急斜面とロープ! 
この壁のような斜面をロープづたいに上る仕組みらしい。
恵雲さんのカメラが転んで割れないか心配。
うまく体に巻きつけてもらって、這いつくばるように10mも上ったかという時、松林の中に小さな赤い屋根が三つ見えてきた。
山頂は立っていられないほど風が強く、向こう側の山稜が霧につつまれている。
なるほど、こりゃ、絶景、さすが霊峰だ。
松の枝が激しい風で折れたのか、いばら状にむき出しで、竜の爪のようだ。
荒々しく、とげとげしくてかなりの迫力がある。
松の幹もひび割れていて、竜の鱗を想像させる。
 見上げれば碧空(へきくう)、絶壁の下は霧、ものすごい強風、そして岩肌に生えた異形な松。
まさに神や仏が降り立つ場所にふさわしい景色だ。
堂宇は奥の方から山の神であるオオヤマズミノ神、スクナヒコノカミ神(薬師如来)、オオナモチノ神(大国主命)と並んでいる。
はて、馬頭観音のお堂がない。
文献では巨岩の上に並ぶ三つのお堂の一番奥が馬頭観音だとされているが、ここにあるのは神様ばかり。
となれば、観音様はやはり下のお堂にいらしたのか?
風が強くなってきた。
このままだと私たちも煽られてふっとんでしまう。
堂宇がしっかり針金で結わえつけられているわけだ。
恵雲さんは飛ばされないよう必死にカメラのシャッターを切っている模様。
「もう帰ろう」と声をかけ、私が先にロープをつかんで下る。
急斜面の下りは滑って危ないのだ。
腰をおとして一歩一歩慎重に降りることにした。
(辻風)


梵珠山 松倉観音堂(松倉神社)
本尊 十一面観音菩薩
御詠歌 あなたうと導き給え観世音 誓いをこゝに松倉の宮
〒037-0631五所川原市前田野目字野脇102
元光寺 0172−62−3382














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