[青森県内観光] | |
津軽の一代様めぐり5 |
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■子年の一代様「多賀(たが)神社」(弘前市) 守り本尊「千手観音菩薩」 |
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〇その4 神仏は分離されても昔からの信仰脈々と
蛇の絵馬もある。いやいや、ここは子年の一代様。 ネズミの姿はどこへ? と考えていた矢先、「こんにちは〜」と登ってくる年配のご夫婦。 慣れているようで、賽銭(さいせん)を次々と撒(ま)く。 水の中にも、石の上にも、チャリンチャリンと景気の良い音が響く。 そして、持っていたカバンからニンジンを取り出し、馬の石像に供え、その足で本殿へ向かった。 正面からは登れないので、背後から回ると、そのご夫婦は何か一心に願い事をしているようだった。 拝殿のテーブルの上には、参拝者が記帳する大学ノートが置いてある。 日付、名前はもちろん、中には訪ねてきた思いや、願い事などを書いている人もいる。 建物の中は薄暗く、扉はカギがかかっているので、円く空いた穴からのぞくと、奥の御幣(ごへい)脇にネズミの張子のようなものがあった。 子年の一代様だが、ネズミにちなんだものはこれくらいしか見つけることができなかった。 整理してみよう。 この神社はもともと神仏混淆の信仰の場所で、本尊は千手観音だった。 それが明治時代の神仏分離令で神社となり、祭神は伊弉諾神(いざなぎのかみ)となった。 けれども、現在も三十三観音と子年の一代様の参拝の地として多くの人々が訪れている。 ということは、長い時を経て環境が変わっても、その土地で育まれてきた人々の信仰というものは変わらずに脈々と受け継がれているということになる。 帰途、誰かに呼び止められたような気がして振り向くと、誰もいない。 でも地面からゴロゴロと声がする。 聞いたことのない、カエルの鳴き声のようだ。 霊場だけに何かのお告げなのかもしれないなと、やけに信心深い人のように心に留め置いて、この神秘的な森を後にした。 (「子年の一代様」の項おわり) |
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