[連載] | |
21話〜24話( 佳木 裕珠 ) |
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◆その21
「また同じ歌かと言ったので」 遊園地に行って、ショッピングセンターに行った後、お母さんと男の人と、僕の三人でカラオケに行きました。 僕は、カラオケが初めてだったので、緊張しましたが、すぐに慣れました。 お母さんがカラオケに合わせて歌うのを初めて聞いたけれど、とても上手なのでびっくりしました。 男の人は、カラオケ屋で、チュウハイを飲みながら、最近は流行っている歌を歌いましたが、あまり上手だとは思いませんでした。 でも、お母さんは一杯拍手をしていました。 僕は、アニメの主題歌を歌いました。 お母さんと男の人は、何曲もデュエットしていました。 僕はあまり歌を知らないので、何時も同じ歌を歌いました。 すると男の人は、また同じ歌かと言ったので、僕はそれからは歌うことを止めました。朝早くから遊園地に行ったので、疲れてしまいました。 でも、お母さん達はとても元気でした。 僕は途中で眠ってしまいました。 ◆その22 「その日から、その男の人は」 朝起きたら、昨日遊園地やカラオケに一緒に行った男の人が、テレビを見ながらトーストを食べていました。 僕を見ても何も言わずに、テレビを見ていました。 お母さんは、昨日の夜、あんたを家まで運んで貰って、遅くなったから、この人に泊まって貰ったんだと言いました。 僕は、ありがとうと言うと、その男の人は、テレビを見ながら、うんと言いました。 お母さんは、僕にもトーストを焼き、卵焼きを作ってくれました。 お母さんが朝食を作ってくれたのは本当に久し振りだったので、僕はとても嬉しくなりました。 だから、その日学校へ行っても、先生の言うことを良く聞けたように思います。 その日から、その男の人は、時々家に来て泊まっていくようになりました。 その男の人は、僕のことを無視しているようで、あまり好きになれません。 でも、その男の人が来ると、お母さんはとても機嫌が良くなるのでした。 ◆その23 「どうして一人で来たの」
昨日の日曜日、お母さんは仕事で朝早くから出掛け、僕は一人でテレビゲームをしていました。 昼近くに、玄関のチャイムが鳴ったので出てみると、ぽつんと妹が一人で立っていました。 びっくりして、どうやって此処まで来たのと聞くと、近所のおじさんの車で送ってもらったと言いました。 妹は、相変わらずとても可愛いいのですが、痩せたように見えました。 そして、服も汚れていて髪もボサボサでした。 お母さんがいないので、僕は得意のチャーハンを作り、二人で一緒に食べました。 妹は、美味しい美味しいと言って一杯食べてくれました。 どうして一人で来たのと聞くと、妹は泣きながら、今度、新しいお母さんが来ると言いました。 新しいお母さんが嫌いなのと聞くと、嫌いじゃないけど、お父さんが結婚すると自分はお祖母ちゃんと暮らすことになるので、お父さんと離れなくちゃいけないと言ってワンワンと泣きました。 ◆その24 「僕はこれからどうしたらいいのでしょう」 妹は、散々泣いてからソファーに座ったままで寝てしまいました。 妹の寝顔を見ていると、あまり可愛くて、僕は悲しくなりました。 どうして悲しい気持ちになるのか不思議です。 でも、悲しくてぽろぽろと涙が出て止まりませんでした。 きっと、お母さんも、あの男の人と結婚するのだろう。 お母さんは、仕事だと言って朝早くから出て行ったけれど、あの男の人と何処かへ出掛けたことを、僕は知っていました。 お母さんが家を出て行った後、2階の窓から外を見ると、曲がり角の所に止まっている車に、お母さんは乗りました。 運転席には、あの男の人がいました。 僕は、今見たことを忘れようと思いました。 だって、お母さんが僕に嘘を言って男の人と遊びに行くなんて、とても悲しいことだから、忘れるのが一番良いと思うのです。 妹は、お父さんに見放され、僕は、お母さんに捨てられるなんて、とても淋しすぎるから。 妹は田舎に住んでいるお父さんの方のお祖母ちゃんの所へ行きました。 妹がたった一人で、僕の所へ来たあの日曜日が、妹と会った最後の日です。 妹は、どんな気持ちで田舎へ行ったのだろう。 今度いつ妹に会えるのだろう。 妹のことを考えると、とても悲しい気持ちになります。 妹は大きくなっても、僕のことを覚えているだろうか。僕は、決して妹のことを忘れない。 お母さんは、あの男の人と結婚しました。 その男の人は、お父さんらしくありません。 僕はお父さんと呼べずに、何時もお母さんに叱られています。 男の人は、僕のことを無視しています。 僕は、出来るだけお母さんとその人のことを邪魔しないように自分の部屋に閉じこもることにしました。 お母さん、僕は一体これからどうしたらいいのでしょう。 お父さん、妹はどうなるのですか。どうぞ教えて下さい。 子どもの僕には何も分かりません。 妹と僕TOP |
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