[連載] | |
21話〜30話( 佳木 裕珠 ) |
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◆その21
校歌(2) 家に帰ってから、昌郎は早速父親に明日まで校歌を覚えなければならない経緯を話し、生徒会長の家の電話番号を知り合いに聞いてもらえないかと頼んだ。 父親は、昌郎が応援団に入ったことを初めて聞いて驚いたが、反面嬉しそうだった。 「そうか、お前が応援団に入ったか。よし分かった。 聞いてやろう。 でも、生徒会長と言っても女の子だろう。 電話一本で、男の子がいる家に来て下さいと言ったって、親御さんが承知しないだろう。 その子の家が分かったら、俺が直に行ってお願いしてやるよ。 しかし、どんなに遅くとも10時までだな、そのあとお前達だけで特訓するんだな」 昌郎の父親は早速、知り合いの家に電話を掛けてくれた。 「昌郎、父さんがその子を家まで送り迎えする条件で、あっちのお父さんから許可をもらったぞ。 これから直ぐ迎えに行くから、お前も付いてこい」 急かせられるままに昌郎は、父親の車に乗り込んだ。 由希に会える。 由希が俺の家に来てくれる。 そう思っただけで昌郎の心臓は高鳴った。 そんな様子を父親に知られないように彼は表情を取り繕った。 まず、知人の家に行った。 そして、その人を車に乗せて由希の家に向かった。 その知人のおじさんは、昌郎を見て随分とでかくなったなと声を掛けてくれた。 そして、応援団に入ったそうだが、なかなか骨があるなと褒めてくれた。 昌郎は何と返事をしていいか分からずに頭を掻いた。 由希の家は、直ぐ近くだった。 大きくもなく小さくもない普通の家だったが、由希の家だと思うだけで、隣近所の家よりも何か特別に浮き上がって見えた。 昌郎は、父の後についてその家の玄関先に立った。 知人がチャイムを押すと、待っていたように玄関のドアが開いた。 「夜分、申し訳ありませんが、先ほど電話で話した件で伺いました」 と知人が挨拶をした。 ◆その22
校歌(3) 由希を連れて家に到着すると、既に真治達が2階の客間で待っていた。 由希が部屋に入って行くと、彼等は神妙に膝を揃えて生徒会長を迎え、誰からともなくオスッと挨拶をした。 由希は、そんな彼等を見て何か可笑しくなってしまった。 まだ、応援の練習に行って何日も経っていないのに、一人前の応援団のように挨拶する彼等を可愛いとさえ思えた。 どうぞ、自分が座っていた座布団の埃を払うようにして、克也が由希の前に差し出した。 「ありがとう」 彼女は遠慮せずにその座布団を受け取った。 応援団は一つでも学年が上なら、慇懃なほどに敬意を払うことを彼女は知っていた。 ここで遠慮したら彼等の応援団員としてのプライドを傷つけることになるかも知れない。 新米応援団員の彼等の気持ちを彼女は汲んだ。 由希を囲むようにして昌郎達が座った。 「こんな時間に済みません。でも、僕らだけでは明日までに到底校歌を覚えられないんで、今からすぐ教えて下さい。10時になったら、また父さんが生徒会長を家に送って行くので、2時間もないんです」 昌郎が口火を切った。 「分かったわ。その前に私からお礼を言わせて。笹岡先生の指導は厳しいと聞いているけれど、それでもこんなに一所懸命に頑張ってくれて、本当にありがとう。よろしくお願いします」 由希は深々と頭を下げた。 そして、顔を上げると早速練習に入った。 「まず私が校歌を1番から3番まで歌います。カセットにとって下さい。私が帰った後は、それで練習して下さい」 昌郎が自分の部屋からカセットレコーダーを持ってきた。 「それでは歌います」 カセットレコーダーのスイッチを入れて昌郎が目で合図すると、由希は臆することなく朗々と歌い始めた。 彼女は楽譜も歌詞カードも見ることなく、しっかりとそして心を込めて美しく歌った。 ◆その23
校歌(4) 一時間半ほどの時間が、あっという間に過ぎていった。 由希はきちんと丁寧に、校歌を教えてくれた。 そして歌詞の意味についても詳しく説いてくれた。 校歌の言葉の意味をしっかりと捉えた説明を聞くだけで、自分達の学校の校歌の素晴らしさが胸に浸みた。 でも、始業式の時や対面式の時、先輩達のほとんどは校歌を歌っていなかった。 音楽の先生が弾く伴奏だけが、体育館の天井に空しく響いていたことを思い出した。 こんなに素晴らしい校歌を歌わないことは、とてももったいないように昌郎は思った。 階下から昌郎を父親が「もうそろそろ時間だぞ」と声を掛けてきた。 「それじゃ、私はこれで帰ります」 由希はすくっと立ち上がった。 それにつられるようにして、昌郎達も立ち上がり、彼女を玄関まで見送った。 「みんな頑張って下さい。みんなだったらきっと良い応援団を作ってくれると、今晩確信したわ。来週の金曜日まで頑張って下さい。私が手伝えることなら何でも言って下さい。全面的に協力します。私はあなた達の応援団ですから」 わーと叫びたい程の喜びを感じたが、彼等は「オスッ」と答えた。 あまり様にはなってはいなかったが、彼等の姿を見て、由希は何とも清々しい気持ちになった。 そばでいた昌郎の母親は、ぷっと吹き出しそうになった。 由希が帰った後、由希が吹き込んでくれたテープに合わせて、彼等は11時まで特訓した。 どうやらメロディーはマスターしたが、歌詞が今ひとつ暗記できていない。 彼等は今晩各自で暗記することにして解散した。 真治達が帰った後、昌郎は自分の部屋に戻って歌詞を頭に叩き込んだ。 1番、2番、3番の歌詞が混ざってしまう。 言い慣れない、聞き慣れない言葉が多いので、スムーズに繋がらない。 昌郎は、テープレコーダーのスイッチを入れた。 由希の歌声が流れて来た。 ◆その24
校歌(5) 土曜日の朝、まずはじめに笹岡は、彼等に一人ずつ校歌を歌わせた。 克也、村山、真治、昌郎の順にあてられた。 克也は3カ所ほど歌詞を忘れ、どまくれてしまった。 しかし、笹岡は何も言わずに黙って聞いていた。 村山は緊張のあまり音程をすっかり外したが、それでも最後まで大声で歌い通した。 歌詞も数カ所間違っていた。 それでも笹岡は何も言わなかった。 真治は無難にこなしたが声が小さく自信がないのが、ありありと分かった。 歌い終わった後、大きなため息を漏らした。 やはり笹岡は黙ったままだった。 昌郎は、目をつぶって歌い始めた。 瞼の裏側に由希の笑顔が浮かんだ。 由希が一緒に歌ってくれているような気がした。 1番はスムーズに歌えたが、歌い終わった後に2番と3番の歌詞が入れ替わっていたかも知れないという不安があった。 4人が歌い終わった後、笹岡はしばらく腕を組みながらじっと目を閉じていた。 彼等の誰もが、完璧に歌えたなどとは思っていない。 きっとこれは嵐の前の静けさだろうと、肝を冷やして笹岡の言葉を待った。 突然、きらっと目を開けると、笹岡は4人を見渡した。 雷が落ちるぞ、彼等はそう思って覚悟した。 だが笹岡の言葉は意外なものだった。 「お前らの校歌には魂がある。歌詞や音程に大いに難点はあるが、気持ちが込められている」 笹岡はそう言った。 これって褒められているんだろうか。 笹岡の意外な言葉に彼等は戸惑った。 「誰に教えてもらった」 昌郎が聞かれた。 「生徒会長の加藤由希先輩にです」 「やはり加藤か。彼女の校歌はピカイチだ。男どもがかなうものじゃない。そうか彼女に特訓してもらったか」 「はい」 4人は嬉しくなって声を揃えて返事をした。 「じゃは聞くが、彼女の校歌はどうして素晴らしいんだ。その理由が分かるか。真治答えてみろ」 真治は目を白黒させながら答えを探した。 ◆その25 校歌(6) 真治は何も答えられなかった。 今度は同じ質問を克也が聞かれた。 「えーと」 考えあぐねた末に彼は答えた。 「生徒会長の校歌が素晴らしいのは、きっと音程がしっかりしているからだと思います」 笹岡は低い声で克也に聞き直した。 「音程がしっかりしているだと」 それは笹岡が意図する答えとは違うとことだった。 「ではないかと思いますが、違うかも知れません」 「そうだ、違うな」 「はい、違います」 「山村、お前はどう思う」 山村は一瞬ぴくっとしながらも訥々と答えた。 「生徒会長は、自分の学校に誇りを持っているからだと思います」 笹岡は大きく頷いた。 「そうだ、そこなんだ。山村、はっきり言ってお前は音痴だ。音楽とはほど遠い」 「はい」 山村は自信ありげに答えた。 「しかし、山村お前の校歌が一番良かった。お前の校歌は胸に浸みた。お前は、あの高校に入って心から嬉しいだろう。そして、今いる高校に誇りを持っているだろう」 「はい、俺はあの学校を誇りに思っています。俺みたいなもんでも入学させてくれたあの学校が大好きです」 「そうだ、その気持ちが校歌を歌うときには大切なんだ。その意味から言って、昌郎の校歌は間違いはなかったが、山村の校歌には及ばない」 昌郎は、はっと思った。無理なく入れる学校というだけで今の高校を選んだ。 だから入学しても嬉しくもなかった。 青森市内には、もっとレベルが高い進学校と呼ばれる学校がある。 学力的にあまり高い学校でないと社会の皆は思っている。 自分の学校を、そんな風に見ていた自分に気が付いて彼はハッとした。 「昌郎、お前の校歌には誇りがない。だが、自分が入った学校は、一生母校なんだ。その母校に誇りが持てなくてどうする。誇りのない奴に応援団は務まらん」 笹岡の言葉が、鋭い刃のように昌郎の胸に突き刺さった。 ◆その26 新生応援団(1) 10日間に及ぶ特訓の後半になってから、笹岡はようやく発声練習や太鼓に合わせた応援演技の基本練習に入った。 しかし、グラウンド5周と腕立て伏せ、そしてスクワットは毎日欠かさなかった。 笹岡の口癖は「まず身体を鍛えろ。そして心を磨け」で、勿論間違いは厳しく指摘されるが、出来映えよりも全てに気持ちが入っているかどうかが問われた。 昌郎達4人は、笹岡の特訓に良く耐えた。 明日からゴールデンウィークに入るという日が特訓の最終日となった。 大きく西に傾いた太陽が、鮮やかな朱色に輝いてグラウンドの昌郎達を金色に照らしていた。 明日からの大型連休を前にして、いつも遅くまで練習している陸上競技部やサッカー部の生徒達は、早々と帰宅しグラウンドにいるのは、昌郎達と笹岡だけだった。 笹岡は、横一列に並んだ昌郎達を前にして、この10日間の締めの言葉をかけた。 「お前達を初めて見た時、正直言って2日と持たないだろうと俺は思った。3日持てば上々だろうと高(たか)を括(くく)っていた。だがお前達は、見事にこの10日間の特訓に耐えた。今だから言う。お前達は立派だ」 笹岡のその言葉を聞いた昌郎達は驚いた。 今まで数え切れないほど叱られ怒鳴られたが、一度たりとも褒められたことはなかった自分達を、立派だと言ったのだ。 西に沈む太陽を背にして立つ笹岡の顔は、影となって表情は定かにはわからなかったが、いつもの仁王のような厳しい雰囲気がなく、包み込むような大きな懐を感じた。 そして驚きは感動に変った。 自分達は10日間の特訓を乗り越えたのだ。 打ち寄せる波の様に、彼等の胸に充実感が繰り返して押し寄せた。 山村の目に涙が溢れた。 真治は嗚咽を堪えた。 克也は鼻を啜り上げた。 そして昌郎は静かに涙を零(おと)した。 夕陽に照らされて輝く昌郎達の顔を見る笹岡の胸にも、喜びと満足感が湧き上がってきた。 ◆その27
新生応援団(2) 「笹岡先生。お願いがあります。これからも俺達に練習を付けてください」 感極まったような声で、山村が言った。 克也と真治も山村のその言葉に弾かれたように声を揃えた。 「先生、俺達をもっともっと立派な応援団員にしてください」 弱腰、逃げ腰だった二人も、今は心の底からそう笹岡に懇願していた。 昌郎も彼等と同じ気持ちだった。 「笹岡先生。俺達はやっと応援団としてスタートしたばかりです。もっともっと覚えなければならないことがあるはずです。そして先生が何時もおっしゃってお られるように、もっともっと体を鍛え、そして心を磨かなくてはいけないと思います。そのためにも是非、これからも指導してください。毎日とは言いません。 せめて週に一度は教えてください。後は自主的に練習しますから」 お願いします。 お願いします。 昌郎達は縋(すが)るように懇願した。 笹岡は腕を組み仁王立ちになりながら、目を閉じて彼等の言葉を聞いていたが、ぱっと目を開くと昌郎達を一人ずつ見詰めた後で、おもむろに口を開いた。 「よし、わかった。お前達に俺の持っているものを全て教えてやろう」 昌郎達は、ありがとうございますと声を揃えたが、その言葉を笹岡は制した。 「だが、俺の練習は厳しいから、それなりの覚悟はできているな」 山村は言った。 「歯を食いしばってもついて行きます」 克也と真治が言った。 そして昌郎が言った。 「先生、よろしくお願いします」 笹岡は、もう一度一人一人の顔をしっかりと見た。 そして大きく頷いた。 こいつらなら、本当に俺の指導についてきてくれるだろう。 この四人に自分が持っている応援団の全てを教え込んでみよう。 笹岡の胸に中に、久し振りに応援団員だった学生時代の頃の、燃え滾(たぎ)るような情熱が蘇ってくるのだった。 ◆その28
新生応援団(3) 昌郎たちは、ゴールデンウィークの全てを費やして、笹岡から受けた応援演技や太鼓の打ち方などの練習と今後の応援団の在り方について語り合った。 6月第1週めの金曜日に青森県高等学校総合体育大会の開会式が陸上競技場で開催される。 その開会式が始まる直前にスタンドの観客席に陣取った各校の生徒達は、応援合戦を展開しエールの交換を行うのだが、その時の陣頭指揮は応援団に全て任せられる。 何百人もの生徒を一つにまとめ声援を送ることが、果たして1年生の自分達できるだろうか。 先輩達は協力してくれるだろうか。 また、その開会式の前日には校内で壮行式もある。 それが、昌郎達の初舞台になる。 まずは、それを成功させなければならない。 考えれば考えるほど心配になってくるが、応援団としてそれらを成し遂げなければならないのだ。 ここで、止めますなどとはもう言えないことを彼等は十分知っていた。 やるしかないのである。 自分達には笹岡先生が付いている。 そして生徒会長を初めとする生徒会役員全員が付いている。 だが、由希を筆頭に生徒会役員はほとんどが女性である。 男は副会長と会計監査の二人だけで、彼等はどちらも2年生だが、どことなく頼り甲斐のない先輩達だった。 しかし、生徒会役員に協力してもらわなければ、全校生徒を纏(まと)めることなどできはしない。 まず由希にそのことを話して役員の全面的な協力を依頼しようということになった。 連休の狭間、通常通りの授業日が2日間あった。 登校すると朝のホームルームの前に、昌郎達は由希の所に行った。 3年生の教室に1年生が行くことは、大層勇気のいることだったが、そんなことは言っていられない。 意を決して彼等は3年生の教室まで行った。 早い時間帯だったので、教室には10人程の生徒しかいなかったが、既に由希は登校していた。 ◆その29
新生応援団(4) 由希は、端正な姿で文庫本を読んでいた。 「すいません加藤先輩に用事があるんですが」 教室の入り口で昌郎は低い声で言った。 由希は本に夢中らしく彼の声に気付かず、入り口近くにいた女子生徒が振り向いた。 まだ真新しい学生服で新入生だとわかったのだろう。 3年生の威厳を誇示するような言い方で 「何か用事」と昌郎に聞いた。 「はい、加藤先輩に用事があるんですが」 「ああ、由希に用事」 彼女は吃驚するくらいの大声を出して由希を呼んだ。 「由希、1年生の男子が面会よ」 教室にいる生徒全員が、彼等の方へ目を向けた。 昌郎たちは4人肩を寄せ合うように一塊になって身を硬くした。 読んでいた本から顔を上げ、声の主の方を見た由希は昌郎たちに気が付いた。 「由希、お客さんよ」 「マーちゃん、ありがとう」 そう言いながら立ち上がると、由希は真っ直ぐに彼等のいる入り口へと歩いてきた。 昌郎たちは一層身体を硬くした。 由希は、彼等の前に来ると、深々と頭を下げた。 「本当によく頑張ってくれたわ。ありがとう。私、昨日笹岡先生のお宅まで生徒会顧問の辻先生とお礼に伺ったの。笹岡先生は、とても皆のことを褒めていた わ。あ、これは内緒だったんだ。そして、これからも1週間に1度は練習をつけて欲しいと頼まれたので、引き受けたと喜んでいらしたわ」 「ええ、お礼に言ってくれたんですか」 克也は驚いて聞き返した。 「御自分の仕事の時間を割いて指導して下さったんですもの」 「本当に、俺たちのことを褒めていたんですか」 上擦った声を山村があげた。 「へえー」 溜息をつくように小声で真治が呟いた。 「褒めていたことは内緒よ」 由希は念を押しながら、温かな微笑を浮かべて彼等を見た。 彼女の微笑みの美しさに、昌郎の胸はどきんと大きく打った。 「おめでとう、新生応援団」 由希は高らかにそう昌郎たちに言った。 ◆その30
新生応援団(5) 生まれたての応援団に、生徒会役員全員が是非協力して欲しい。 その申し出に由希は、勿論そのつもりよと言い、応援団が結成された時には吹奏楽部も全面的に協力してくれることになっていることを付け加えた。 「前に話したけれど、ねぶた囃子を応援のレパートリーに入れて欲しいの。吹奏楽部でも、その演奏の準備はもうできていると言っていたわ。吹奏楽部の部長と会ってください」 これからの応援団の活動について、今日の放課後に色々話し合い打ち合わせをすることにして、昌郎達は由希の教室を辞した。 昌郎は放課後になるのが待ち遠しかった。 授業中ふと気が付くと、彼は由希の美しい笑顔を頭の中に描いている自分に思いあたった。 由希と一緒に活動できることが嬉しかった。 しかし、応援団の前途には幾多の問題や課題が山積していることも確かだった。 自分達の応援団は緒に着いたばかりである。 全てはこれからだ。 だからこそ遣り甲斐もあると昌郎は思うのだった。 放課後、昌郎達4人は特別教室棟の2階東端にある生徒会室に行った。 生徒会顧問の辻先生と生徒会執行部全員、そして吹奏楽部長が既に揃って新生応援団の昌郎達を待っていた。 彼等が生徒会室に一歩は行った時、思いも掛けなかった拍手が沸き起こった。 なんだこれは、昌郎達は一瞬そう思った。 そしてその拍手が自分達に向けられた期待と賛辞だと、ようやく気が付くのだった。 「今日は、新生応援団を紹介したいと思って、辻先生においでいただき、生徒会執行部全員、吹奏楽部長の根上さんにも集まってもらいました。こっちに座って下さい」 20人ほどの輪の中に、4つの椅子があった。 先輩達と肩を並べて座る居心地の悪さよりも、自分達が高校生になったのだという矜持が彼等を高揚させた。 「よろしくお願いします」 4人は声を揃えて挨拶をした。 雪降る駅でTOP |
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