[子育て]

1話〜10話      柴田学園大学短期大学部 学長 島内 智秋



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[その1]

 子どもと関わる仕事につく人は、子どもについての理論を学び、実習に行き、それをもとに更に学ぶ……ということを へて、ようやく現場に出ます。ところが母親になるのは突然。ましてや今はお母さん自身が核家族に育ち、兄弟が少ない人が多いので、赤ちゃんを前に不安にな るのも当たり前。
 そんなお母さんに「育児をもっと楽しんでもらいたい。一生に一度しかないその時期を心豊かに過ごしてほしい!」という願いから、子育てサポートを始めました。「うちの子、こんな風だけどいいの?」と、何でも気軽に相談できるコーナーにしたいと思っています。
 私も3人の子育て真っ最中。帰宅後、布団を敷き子どもと泳ぐまねをして大騒ぎしては主人に叱られたり、絵本を読んであげている途中でウトウト私の方が先に寝ちゃったり、失敗の多いママ兼先生の私ですが、一緒に育児を考えていきましょう。



[その2]

●運転免許のないママが子連れで出掛けるのは戦争!

 着替えやタナ(おぶる道具)を持ち重装備。電車の中でも冷や汗。つり革に「届きそう!!」と手を伸ばしたり、「次は○○駅運賃箱にお入れ下さい」のアナ ウンスが入ると、「だれか上で言ってるの?」「お母さん。うんちばこ!?(運賃箱)くさいねー」と矢継ぎ早の質問に周りの人はクスクス。
 ようやく着いた目的の駅。たくさーん遊んでケンカして、たくさーんごんぼほった(だだをこねた)あと、帰りのバスに乗った途端に、二人ともグッスリ。
 次男をおぶり長女を抱きかかえ両腕には荷物。運賃を入れホッとして、降りる時に長女の靴がポロリ……、泣きたい私の気持ちを察してか、「もう少しで大きくなるよ。もう少しもう少し」と娘の足に靴を履かせてくれたお婆ちゃん。
 お婆ちゃんのあふれる優しさに、じ〜んと胸があつくなり、何度も何度もおじぎして、しばらくバスを見送っていました。(優しさに救われました。ありがとう)



[その3]

 ある9月の日曜日。大手スーパーの子どもコーナーでのこと。
パパと子どものペアが二組。おじいちゃんとのペアが一組。なんともイイ感じで遊んでいました。
 すると、パパとくっついて遊んでいた1歳位の子が他の子のオモチャを取ろうとしました。すかさず「だめ!じゅんばん」と父親の声。その子は順番の意味をわかったのか(?)手を引っ込めました。
 また、6歳位の子とパパは、布ボールでキャッチボールとドッジボールが混じったような遊びをしていましたが、お父さんも本気の迫力!!  それがまた、子どもにとっては嬉しくておもしろいようでした。ボールがそれて他の人に取ってもらうのを見てお父さんは「ありがとうは?」とすぐに気付か せていました。
 二組の親子を見ていて、このお父さん達は実に分かりやすくシンプルに社会ルールを教えているなあと感心。父親の育児不参加などがよく取り上げられる中、とてもさわやかな光景でした。



[その4]
 
 前回紹介した子どもが遊べるコーナーにいた赤ちゃんと一緒のおじいちゃん。一生懸命なパパ達とは別に、おじいちゃんは赤ちゃんの横で何もしないで見ていて、好きなように遊ばせて、いたずらをしても見守っています。危ない時だけ助けに行き、また見守っているのです。
 この頃の子どものいたずらは、大人が考えるようないたずらではなく、好奇心いっぱいの探索行動です。危険でない、他の人にも迷惑のかからないようないた ずらは十分にさせてあげたいものです。いたずらは探究心や創造力が育っている成長過程の表れなのです。(いたずらに関しては次回詳しく)
 そのおじいちゃんは、知ってか知らずか、子どものいたずらをゆったりと嬉しそうに見守っていました。子どもの近くにいすぎて、動きを先取りしてばかりで は見えないこともあり、少し子どもに任せて見守ることで、見えてくることや、育ちに気付くことも多いように思います。学ぶことが多い日曜日でした。



[その5]

●「いたずらっ子」

 次男の“いたずら”に毎日頭を悩ませたのは2歳の頃。障子に穴を開けてはのぞきこみ、向こう側を見て満面の笑みで拍手。それを防ごうとタンスを前に置い たら、引き出しを階段のようにして上がり、まだキレイな上の障子も容赦なくパンパンパン! 私の作戦は裏目に出たのだった。
思えば“いたずら”も年齢ごとに発達し、1歳頃はボックスティッシュからペーパーを全部出し、白い山を幾つも作っては、また新たな箱に挑んでいた。しばらくは袋の中にティッシュを入れ、そこから使用していたことは言うまでもない。
“いたずら”は探索行動であり、大人から見て困ることも子どもにとっては学習のスタート、好奇心の表れといわれる。いたずらっ子ほど意欲的な子になり、学習も伸びるとか。そんなことを聞くと、いたずらしているキラキラとした笑顔もどこか賢そうに思えてくる。
 いたずらはほんの一時期。あまりガミガミいわず、安全な環境を用意して、いっそのこと一緒に楽しもう!



[その6]

●「夜泣き」(1)

 子どもの誕生日に母子手帳を見ていた。誕生日には、子どもに産まれた時のことや小さかった時のエピソードを話し、その時々の家族の思いもきかせている。まだまだ子育て最中だが、よくここまで大きくなったものだと感慨深いものがある。
勤めながらの子育ては心と体の健康維持が難しい。思えば長男が1歳の頃、夜泣きに悩まされ睡眠不足の日が続いた。深夜、寝室に響くけたたましい泣き声(叫 び声?)。眠い目をこすりオムツを替え、ミルクを飲ませてゲップ。思いあたることはみんなしたが、泣きやまない。抱っこしたまましばらく揺れてみる。 空には星がチカチカ、バイパスには大型トラックが行き交っている。少し眠たげに目をつむった我が夜泣き虫。今だ!とそ〜っと布団に寝かせ手を外す。そ のとたん“え〜ん”とまた始まった。今までの努力はどこへやら…。
成長した子どもの寝顔にその時の面影が重なる。“大きくなったね”と頭をなでてつぶやく。今思うと懐かしく、愛しさと共に甦る。



[その7]

●「夜泣きの原因」(2)

 前回、“夜泣き虫”回顧録を綴った。今回は、現在、子どもの夜泣きに悩みヘトヘトになっているお母さんのために、原因と言われているものを挙げてみる。
 抱き癖もその一つ。でも、いずれ抱けない年齢になるのだから、しっかり抱いてあげた方がいいというのが、3人の子を持つ母としての持論です。
 また、昼夜逆転も原因とされるが、要は日中機嫌がいい時に、起きているのが楽しくてしょうがないような遊びをすることをお勧め!! 赤ちゃんも喜び、いい運動にもなります。
 また、布おむつと母乳で頑張るお母さん、夜は紙おむつにすると、赤ちゃんも続けて眠られるし、ミルクにすると、ハラ持ちもいいので、授乳間隔が長くな り、親子ともぐっすり。頑張りすぎて睡眠不足から、イライラして八つ当たりするよりも、一緒にくっついて眠られる時を大切にして下さいね。
 夜泣きは決して育て方が悪いからではない。あまり神経質になって、自分を責めたりせず、一過性のものと考えて、焦らずにいろいろ工夫しましょうね。



[その8]

●「平成15年大晦日」

 平成15年大晦日。おせちに年越しそば、年末特別番組を見ながら除夜の鐘……の予定だった。
 子どもの異変は不思議と病院の休日や深夜に限って起こる。娘も例にもれず、急に腹痛と嘔吐の症状。病院で一時間の点滴中に、数十回もつきあげる。熱もなくその日も元気に走り回って何の前触れもなかったのに、今や顔面蒼白、蚊のなくような声になってしまった。
 熱なら冷やしたり水分補給などの手当てのしようもあるが、嘔吐はどうしようもできない。嘔吐が続くとおなかがすくことや、脱水症状になるのを心配し、何かを口に運んであげたくなるが、つき上げがおさまるまでは何もあげない方がいいとのこと。
 少し落ち着いたら口の中をゆすがせて口臭もスッキリ(この臭いが吐き気を誘発することもある)。イオン飲料水などを少しずつあげ、様子をみるといいらしい。
 ぐったりした娘を見て、「かわってあげたい」と思ったり、「どんなにうるさくても元気が一番!!」と切に願う母心でした。



[その9]

●「お散歩できない…、そんな時は」

 子どもと毎日過ごしていると、ある時期まではオシメ、ミルク、ネンネ、オシメ、ミルク…と、単調な生活の繰り返し。1歳後半からは午前と午後1回ずつの 昼寝になり、起きて遊ぶ時間も長くなって、子どもの生活リズムもできてくる。歩き始めは、散歩が大好きな頃。お日様の栄養、空気のシャワー、ありあまる ほどの自然の恵みを充分に与えたい。
 でも晴れの日ばかりとは限らない。雨で散歩ができない日が続くと、子どももストレスが溜まり、怒りやすかったり泣きやすかったりする。
 そんな時は、一緒にこねこね小麦粉粘土がお勧め。口に入れても安心。小麦粉に少しずつ水を入れ、耳たぶくらいの硬さにして、できあがり!その感触の良さ に、ニギニギ(握って)にんまり。ひとしきり夢中になって遊びます。食紅やエッセンス(バニラ、ストロベリー等)を加えると、本格的なパティシ エ気分!もしかしたら将来、お菓子づくりをするようになったりして…と、親に好都合な夢を見るのであった。ゴクリ!



[その10]
 
 「ママママ…こここれちょーだい!!」デパートに響きわたる声。長男が2歳の時、言葉が遅いことや吃音(ども り)が出てきたことを心配していた矢先のことでした。情けないことにその場では「恥ずかしい」と思ってしまったのです。藁をもつかむ思いで言葉の専門の先 生に相談。2歳前後は話したいことをうまく言葉で表現できなくて吃音が出ることもあるとのこと。そして吃音が出たら「そうねーママねー」というように正し く言葉を聞かせながらゆったりと気持ちを受け止めてあげるのがいいとアドバイスを受けました。その関わりを続けたところ、嘘のように吃音はなくなった のです。喃語も近くにお母さんがいる時といない時とでは3倍も違うといわれているように、話したい気持ちと聞いてもらえる安心感とがあって言葉は育ってい くように思います。吃音や言葉の遅いことに悩んでいるお母さん。ゆったり聞いて沢山語りかけて子どもの「話したくなる心」をゆっくり焦らず育んでいきま しょうね。


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