[青森県内観光]
「 写真エッセイ─あ お も り 心 象 百 景 」
写真・文 山内 正行(編集者/青森市在住)
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あおもり心象百景 その4


岩木山─Ⅳ 借景

 弘前学院聖愛高校硬式野球部の原田一範監督に取材をして、本にしたことがある。
 本のタイトルは『弘前学園聖愛高校 原田一範物語 りんごっ子で日本一』(泰斗舎・2014年刊)。
 同校野球部は2013年、夏の甲子園に初出場を果たした。
その甲子園では、青森県出身者だけのナインで、ベスト16に進出し、県内外の話題をさらった。
 甲子園でのお立ち台でインタビューに応じる原田監督の受け答えにピンときて、大会後すぐ、知人を介して出版企画を提案し、快諾をいただいた。
 取材は計8回、4か月に及んだが、いつも目に飛び込んできたのは、グラウンドの真正面にデンと鎮座する岩木山だった。
 最高の借景(しゃっけい)!
 筆者は、訪ねる度にそう思った。
 借景とは? 辞書で引くと、「造園技巧の一つ。
庭園外の山や樹木の風景を、庭園の一部としてとり入れたもの」(『日本国語大辞典』小学館)とある。
 岩木山を借景として最大限に生かしている庭園と言えば、弘前公園に他ならない。特に公園本丸からの眺めは、春夏秋冬を問わず、まさに絶景である。
 グラウンドの場合、借景という表現は当たらないのだろう。
 しかし、背景の岩木山は、やはり借景であり、主景は土にまみれる部員たちの姿、と筆者には映った。
 この岩木山は、原田監督にとって、どんな存在なのだろうか。
 尋ねてみると。
「私にとって岩木山は、何があっても見守ってくれている存在です。グラウンドで練習している中、順調な時も逆境の時も、いつも見守ってくれてます。勝って帰ってきても、負けて帰ってきても、いつも『おかえりなさい』と受け入れてくれています。そんな母親のような存在です」
 味があって、実(じつ)がある答えが返ってきた。

 
聖愛高校グラウンドから見る岩木山(2013年当時)



弘前公園本丸から蓮池と岩木山(8月初旬)


弘前公園本丸から冠雪の岩木山と紅葉(10月下旬)


『弘前学院聖愛高校 原田一範物語 りんごっ子で日本一』
(山内正行・原田一範著/泰斗舎刊)


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